僕はホモじゃない
これは⋯⋯
さらに十八年前の話になる⋯⋯
当時、高校生だった浮島の話だ。彼は地元である京都の名門校に通う、成績優秀でスポーツ万能の爽やかな好青年であった。
高校ではテニス部の主将も務めるなど、著しい活躍を見せていた。
その裏で⋯⋯
父から陰陽師としての英才教育も受けていた。
高校生ながら優れた霊能力を覚醒させており、休日は父や著名霊能者のアシスタントも務めるなど、オカルト方面でも様々な活動をしていた。
浮島の実家は地元でも有名な大社であり、将来は宮司である父の跡を継ぐ予定であった。
裏庭では父の愛車、Sクラスのベンツが輝いていた。
当然、女性にもモテていた。
バレンタインの日ともなれば、彼の下駄箱やロッカーの中には、数えきれない程のチョコレートが入れられていた。
なんとも⋯⋯
傍目からは羨ましい限りの青春時代である。
だがしかし⋯⋯
そんな彼にも悩みがあった。
理解ある父からは「家柄は気にしなくていい」「心から敬愛できる女性を選んでお付き合いをしなさい」とは言われていたものの⋯⋯
浮島に寄って来るどの女性からも強い邪気が発せられていた。
金持ちのイケメン男子に⋯⋯
我先にと邪な心構えを持った女性ばかり参集⋯⋯
そろそろ二度目の不渡りを出しそうな呉服商の娘⋯⋯自称社長令嬢である後輩の女の子から、勝手に許嫁にされていたことには恐怖を覚えた。
中には⋯⋯
丑の刻参りの恋愛呪詛までふっかけて来た同級生の女の子までいた。
「僕は心から愛し合える女性と交際がしたいんだ」
浮島は天神川の桜並木の下でそう嘆く⋯⋯
こうして、浮島は強い女性不信、激しい女性恐怖症に苛むようなる。
ホモではない。
進学は関西圏ではなく東京の大学にしたのは⋯⋯しばらく、京都での窮屈な生活から逃れ、気持ちを整理したいからでもあった。
つづく