神霊との邂逅
浮島の高校時代はある意味で悲惨だった。
毎朝、校門に足を踏み入れるや否や⋯⋯
正門前広場にはざっと20~30名の女子学生が待ち構えており、浮島の名を呼ぶ黄色い声が木霊していた。
生徒指導担当の教師や風紀委員もこれを静止することなく、半分は呆れ顔、半分は苦笑いの表情を浮かべていた。
浮島の助けを求める目くばせはスルーである。
待ち構える女性学生たちの中には、当然、間もなく二度目の不渡りを出しそうな呉服商の娘や、呪詛をかけて来た女の子もいた。
浮島の通う学校は京都でも名門で、それなりの家柄、出自の子息が集まっていたのは事実であるが⋯⋯
織田信長や豊臣秀吉の子孫はもとより⋯⋯アルデバランの宇宙意思や卑弥呼の生まれ変わりを自称する子まで現れた。
普通の富裕層とは違う⋯⋯
霊験あらたかな金持ちのイケメン男子と結婚するためなら⋯⋯
なりふり構わずと言った感じであった。
こうなってしまったのは⋯⋯
某オカルト雑誌の取材を受けて以降からであった。
それまではわりと普通のアプローチを受けていたが、女の子たちの態度が一変⋯⋯最近では巫女のコスプレをして浮島に接近して来る子まで現れた。
「もう、滅茶苦茶だ!こんなんじゃ普通の恋愛ができない!」
浮島は頭を抱え込む。
同級生たちには関西学院か同志社に行くとウソを言い⋯⋯
とりあえず、この京都での呪縛を逃れる算段を考え始める。大学へ行くなら自分のことを詳しく知る者がいない東京だ。
そんなある日の出来事だった⋯⋯
深夜、自室で眠りに就いていたところ、室内に誰かいる気配を感じて目を覚ます。父や母、家族の気配とは違う何かだった。
直後、浮島の頬に⋯⋯
動物の尻尾のようなものが伝う感覚を覚える。
「ふん、動物霊か⋯⋯」
どうせ、相手は低級の動物霊だろうと無視をした。たまにこう言う事があったのだ。放置しておけば、大抵、朝までにどこかへ消え失せていた。
しかし、この日の晩に限ってそれは違った⋯⋯
浮島の周囲を歩き回り、顔に鼻のようなものをくっ付けて来た。
つづく