タルパ戦争《前日譚》あらすじ

投稿日 2025.08.16 更新日 2025.08.16

 浮き草氏の青春時代は壮絶だった⋯⋯

 スポーツ万能で成績優秀、実家は有名な大社で、宮司である父親は合気道の達人で多くの弟子を抱える道場も運営していた。さらに、一時期ではあるが市議会議員を務めていたこともある地元の名士だった。

 浮き草氏は自宅の最寄り駅から数駅先ある京都府内屈指の名門校に通っていた。学校ではテニス部の主将も務めるなど、女生徒たちの憧れの的となっていた。毎朝、登校する度に洗礼のようなものを受けていた⋯⋯

 いつも、校門前に多くの女生徒たちが群がり、浮き草氏が姿を見せると黄色い声が飛び交いまくった。

「浮島さーん!!顔みせてぇえええええ!!」

 一人の女生徒がそう叫ぶと、浮き草氏はしぶしぶ狐面をはずす。

 直後、女生徒たちの黄色い声が最高潮に達し、中には失神して気絶する子まで現れた。浮き草氏は超イケメン男子でもあったのだ。

 故に普段から狐の面を被り生活していた。

 誰しもここまで話を聞くと⋯⋯

 何とも羨ましい限りの青春時代、学園生活に思えるが、当人である浮き草氏には過酷な日々だった。

 金持ちのイケメン男子にすり寄って来る女子のほとんどは⋯⋯

 邪な心を持った者たちだった。

 優れた霊能者でもあった浮き草氏はそれを見抜くことは容易かった。たくさんの生霊に取り憑かれていたり、取り憑いた者を金の亡者に貶めさせる動物霊まで従えてさせていた子が⋯⋯多く見えたのだ。

 浮き草氏に対して特に熱烈的なアピール、卒業後は結婚を⋯⋯そのように執拗に迫って来る下級生もいたのだが⋯⋯その実、もうすぐ二度目の不渡りを出しそうな呉服問屋の娘であったのだ。

 浮き草氏の気を惹こうと⋯⋯

 巫女のコスプレ姿となり、自分は卑弥呼の生まれ変わり、あなたと結ばれる運命にあると言って迫って来る同級生の女生徒までいた。

 浮き草氏の父親は理解ある人物だった。

「相手の家柄は気にせず、本当に好きな人とお付き合いしなさい」

 常日頃からそう言われていただけあり苦しい境地にあった。

「僕は心から愛し合える人と恋愛がしたいんだ」

 天神川沿いの桜並木の下でそう嘆く浮き草氏⋯⋯

 高校時代のこうした体験が原因となり、浮き草氏は人間不信に陥りかけていたのだ。結局、初体験は人間でなく狐の神霊との契りで済ませている。

 大学進学直後は一時、風俗に走るなど荒んだ生活をするようになる。テレクラに入り浸り、テレフォンセックスに興じるようになる。しかし、そんな彼に大きな転機が訪れる。同じ大学に通う木口洋子との出会いだ。

つづく