タルパのいない八月

2010年8月2日、オカルト界の片隅で激震が走る⋯⋯
前日、タルパ界隈が暴走したタルパの鎮圧とホロ女史の救出に成功した喜びに溢れていたのも束の間⋯⋯浮き草氏によって、すべて自分たちの演技、全部作り話であったことが暴露されたのだ。
これに批判と怒りの声が集まる。
しかし、浮き草氏は意味深にこう述べた⋯⋯
「自分たちの中では確かにあった出来事だよな?」
そして、共有ダイブと称して、暴走した美少女タルパと取っ組み合い、チャネリングによる性交を強制的に試みようとして、単にお前らがオナニーしていただけの声をバッチリ録音していたことまで明らかにされた。
一同、これに凍り付く。
それらの音声データはわかる人が聴けば誰とわかる鮮明なものだった。中には射精と同時に大絶叫していた者までいた。
「君たちのしたこと⋯⋯まるで〇イプだねぇ」
タルパ戦争に参加していた者たちは、浮き草氏のこの一言に絶句。蜘蛛の子を散らすように全員消え失せた。
こうして⋯⋯
今日まで誰一人として関係当事者が名乗り出て来れないのである。
浮き草氏の企みはある意味において失敗と言える。
全員が存在しないはずのタルパを認識してセックスしようとしたのだ。セクハラ犯の特定どころではない。
しかも、全員⋯⋯
共有ダイブ以前にダイブそのものすらできていなかったのだ。
ガイド(催眠誘導)による暗示で⋯⋯
ある特徴が確認できれば、ダイブできていないことを一発で見破れたのだ。ダイブは幽体化を促す行為となるため、肉体はぐったりと静止したままの状態となるはずだ。一般的な催眠術やトランスのように動く必要はない。
参加していた者たちは、確かに強い変性意識状態となっていたが⋯⋯
浮き草氏に言われるがまま⋯⋯呼吸を限界まで止めて意識を失ったり、手近にあった日用品を食べようとして喉を詰まらせたり、中には激しいトランス状態に陥り、鼻血を大量に出して倒れる者まで出た始末だ。
流石に危険と判断され、初日の実験はそこで中断される。
しかし、参加者らはそうした朦朧とする意識の中で、美少女タルパを認識していたようだ。
明日こそは自分が美少女タルパとセックスする!いや、俺こそが!そう息を巻き、二日目の実験はさらに凄惨を極める。
タルパーたちのオナニー声がネット上に木霊する⋯⋯
つづく