タルパーたちの戦後|霊能者の就職先

それにしても不思議だった⋯⋯
浮き草氏はこれほどまでに強い霊力を持った人物を、易々と近づけてしまった自分を疑った。
いつもなら半径数十メートル以内で気づくことができたはずだ。
とりあえず⋯⋯今、目の前に立つ男も霊能者であることは間違いない。そして、悪意や敵対心のようなものは一切ないことはすぐに理解でき、しばらくすると妙な安堵感に包まれた。
「驚かせてすまない⋯⋯君に見せたいものがある。思念を送るから受け止めて欲しい。それを見た上で私の質問に対して⋯⋯慎重に答えて欲しい」
「み、見せたいもの⋯⋯」
直後、浮き草氏の脳裏に走馬灯のようなイメージが流れ始める⋯⋯
「どうだい?これが今の日本の現状、真実なんだ!」
「こ、これは⋯⋯あなたは一体何者ですか?」
次の瞬間、浮き草氏は金縛りが解かれぐったりする。男は懐をまさぐりながら、一枚の名刺を取り出すと浮き草氏に手渡そうとしてきた。
「申し遅れました、私はこう言う者です」
「自衛隊協力本部?」
「自衛隊に入りませんか!!今、あなたのような人材を必要としています!!」
「まさか⋯⋯自衛隊で霊能者を探していたなんて⋯⋯そうだな⋯⋯」
「そうなんですよ!!あなたなら無試験で幹部候補生学校に入れますよ!!」
「え、それ本当ですか!!」
「どうです?あなたのその素晴らしい能力を我が国のために使いませんか?」
「や、やります!!僕!!自衛隊に入ります!!」
「そ、そうか!!じゃ、今から一緒に近くの事務所に来てくれないか?必要な書類を渡すよ。すぐ近くだから!!」
浮き草氏は渡りに船とその場で快諾してしまった。
父の言いつけは絶対だ。今までに一つも破ったことはない⋯⋯と言ったらウソになるが、おおむね守っている。
卒業後、数年間は社会の風に吹かれて来い⋯⋯
これは就職先が見つからないと一生帰郷できないことを意味していた。卒業後、無職になったら陰陽師にもなることができない。
まぁ、浮き草氏は高校時代からテニスをやり込んでいたし、合気道もそこそこ心得があった。体力と運動神経にも自信があったので、自分でも自衛隊はやって行けるだろうと見込んだ。
ちなみに、父に対する唯一の食言は動物精霊とのセックスである。高校生の時、獣人美女とまぐわい今もダイブを通じて交際を続けている。
つづく