Young Heso Wright ~翻訳の迷宮~ ドリフターズ

それから小一時間が経過した⋯⋯
ヘソライト博士は開錠パターンを探り当てるため考え続けていた。床の上に無数の計算式が書かれた紙が散らばる。
そして、時折⋯⋯無骨なロック機構を計算した通りに動かしてみる。
「これもダメ的か」
「ねぇ、これじゃ埒が明かないと思わない?錬金術師なんだからニトログリセリンとか錬成できないの?」
「⋯⋯」
ヘソライト博士はイワナマヤの全身をじっと見つめる⋯⋯
「え、何?何なの?」
「そのためには女性のアレが⋯⋯必要となるんだ。君さえよければニトログリセリンを錬成できるよ」
博士がイワナマヤに近寄り、彼女の耳元で何か小声でささやく⋯⋯
「えぇええええ!!!!それ嫌よ!!!!」
「やっぱりダメ的よね⋯⋯でも、冗談抜きで本当に必要なんだ」
イワナマヤは赤面して扉の方を向く。どこにぶつけていいのかワケワケメな怒りを扉にぶつける。
イワナマヤは両手の握りこぶしをひたすら扉に打ちつけた。
すると⋯⋯
扉がいきなり動き出し見事に開いたのだ。
何のことはなかった⋯⋯鍵はただの飾りで、普通に押せば開けることができたようだった。
奥には一台のトロッコが停車していた。
「古代タルパ人は⋯⋯かなり捻くれた性格をしていたことで有名だったわね。これに乗れば目的地点まで辿り着けるのかしら?」
「とりあえず、乗ってみようか。ブレーキは壊れていないよな?」
トロッコに乗り込む二人⋯⋯
ヘソライト博士が近くの壁を手で押して、作用反作用の力でトロッコを動かす。そして、トロッコは徐々に動きはじめた。
最初はゆっくりとしたスピードで走っていたが、次第に恐怖を覚えつつある速度に達した。
「ねぇ!!ちょっと早過ぎない!!ブレーキ!!ブレーキ!!」
「アレ?どうした?なんか効かない!!魔法でなんとかならないか!!」
「ええええええ!!私!!攻撃魔法しか使えないわ!!!!防御魔法とか知らないしぃいいいいいい!!!!」
つづく