Young Heso Wright ~翻訳の迷宮~ 化身の間

その後、紆余曲折を経てトロッコを停車させることに成功する。
イワナマヤが前方にファイアボールの攻撃魔法を発動して、その衝撃波で止めることができたのだ。
「もっとマシ的な方法はなかったのか!?大やけど負うところだったぞ」
「私も気が動転して咄嗟にアレしか思いつかなかったのよ」
とりあえず⋯⋯
一気に地下第二階層に辿り着くことができた。目的地点はまだ地下奥深くの場所にある。冒険はまだこれからだ。
「気をつけて⋯地下第二階層には化身の間と呼ばれる部屋があるらしいの」
「化身の間?幻的なものでも見させられるのか?」
「心を具現化する場所らしいわ。本来は創造型タルパと言うものを作り出すための精神的な作業環境らしいけど⋯⋯」
「心を具現化って⋯⋯思ったり考えたことが可視化されるのか?」
「さぁ、具体的なことまでわからないわ。ただ、トラウマや過去の悪い記憶を訪問者に見せつけることで、神殿内部へ安易に人を立ち入らせないトラップ、防御機構のようなものでもある⋯⋯そう、聞いたことがあるわ」
顎に手をついて考え事のようなものをはじめるヘソライト博士⋯⋯思念体の研究もしている博士にとって興味深い話だった。しばらくすると、それらしき部屋のような空間に行きついた。
「まさか⋯⋯この部屋がそう的かい?」
「私も初めて来た場所だから断言できないけど⋯⋯そうらしいわ」
部屋の向こう側に別の出入り口があり、どうやら先へ進むためには、この部屋を通過せねばならないようだ。
中は何も置かれていない殺風景な部屋だったが⋯⋯
「ただ、伝説だけどね⋯⋯」
イワナマヤがそうつぶやき、それに対してヘソライト博士が軽くうなず。特に警戒することなく、二人は部屋の中へ足を踏み入れた。
その直後⋯⋯
真っ白なシーツに包まれ、枕が二つ並べられた大きなベッドが出現した。
「えっ!?何的??」
「すぐにこの部屋から出ましょう!!」
しかし、向かい側の扉は固く閉ざされ動かすことができなかった。やむを得ず引き返そうと後ろを振り返るも⋯⋯入って来た際に通って来た入口は、強固なバリケードのようなもので塞がれていた。
「なんか、閉じ込められた的!?」
「やだ、まさか⋯⋯えええええええええええ!!!!」
つづく