Young Heso Wright ~翻訳の迷宮~ 古代人からのメッセージ

ヘソライト博士の好奇心は人一倍強かった⋯⋯
学者なら当然の姿勢かもしれない。
しかし、その学者たちの中でも群を抜いて強く⋯⋯しばしば、同僚らから自制を求められることがあった。大学内では少し浮いた存在だったのだ。今回のヘソス宮殿の探検も、大学上層部の反対を押し切ってのものだった。
化身の間を抜け出ると⋯⋯
長い回廊が伸びていた。どうやら、地下第三階層へ続いているらしい。懐中電灯で足元を照らすと、緩やかな下り階段のような段差が続いていた。
「随分と長い廊下ね⋯⋯どのくらい歩くことになるのかしら」
「とにかく、先へ進む的」
ヘソライト博士がそう言って、懐中電灯を回廊の先に向けた瞬間⋯⋯
両脇の壁に壮大な壁画が描かれていることに気づいた。これにはヘソライト博士も驚き、我を忘れるように回廊の中で立ち尽くした。
「こ、これは⋯⋯すごい的!!古代タルパ時代の人々のメッセージ的!!」
イワナマヤもこれには驚き、壁画に寄り添うよう見つめ続けた。
イワナマヤはトトバース中のエルフ族を取りまとめる長であり、その聖地となるエルフ大神殿の大神官だった。
考古学に詳しくヘソライト博士以上に関心を寄せていた。
「ねぇ、博士⋯⋯これらの壁画って⋯⋯伝説の古代タルパ戦争の様子を描いたものじゃない?ほら、ホムンクルスの巨人兵も描かれている」
「ほ、本当的!!これは素晴らしい的⋯⋯」
古代タルパ戦争⋯⋯
それは今から3000年前の古代タルパ時代に起きたとされる戦役だ。
現在のウィキスタン共和国⋯⋯
そして、このヘソス宮殿のあるヲティスタン共和国⋯⋯さらにその西側にあるアナテスタン共和国の三共和国は⋯⋯
かつて一つの巨大王国、古代タルパ王国のサラーシッナァーン王が支配していた地域になる。ある時、ハラホロヒレハレ大王の侵略を受けたことから⋯⋯壮絶な戦いが始まる。
各地で双方が魔術と錬金術を駆使した戦いが繰り広げられ、ホムンクルスの巨人兵が投入された地域は火の海と化した。
それが古代におけるタルパ戦争である。
現代のトトバースでは⋯⋯
ホムンクルスの生成は禁じられており、ヘソライト博士のように実験室レベルでの生成は特別に許可されたものだった。
ホムンクルスの気体化技術と磁石ジエンを組み合わせることで⋯⋯
つづく