Young Heso Wright ~翻訳の迷宮~ 政情不安定国

これは今から一週間前の話になる⋯⋯
ヘソライト博士がヘソス宮殿の調査のため、ヲティスタン共和国の首都ヤマダハルの郊外にある、ヤマダハル国際空港に到着した時の出来事である。
入国審査を終え、現地案内人と落ち合うため、到着ロビーの約束した場所で佇んでいた。現在のヲティスタン共和国は内戦状態にあり、空港は物々しい警備が敷かれ、兵士が至るところで目を光らせていた。
「なかなか来ない的ぃ⋯⋯」
約束の時間を過ぎても現地案内人がやって来ない⋯⋯そう、博士はやきもきしていると、それらしき人物が近づいてきた。
いや⋯⋯
エルフの美少女だった。
見た目、十代半ばくらいだろうか⋯⋯でも、実年齢は数百歳を超えているのは珍しくない。まぁ、そこは気にしないことにした。
「ヘソライト博士ですか?遅れてすみません。私が現地案内人のキンカです」
「君がブリュリューズ伯爵のところへ連れってくれる的かい?」
「しっ!!声が大きいです!!」
「あ、すまない的⋯⋯」
ブリュリューズ伯爵は反政府軍側の人物だ。
伯爵との接触、面会は⋯⋯
ウィキスタン共和国の外交当局が裏ルートを使ってお膳立てしたものだ。具体的には中立国を介する形で、ヲティスタン共和国の反政府軍側と確立していたコネクションを使用した形になる。
正規の外交ルートとは違うでの、大きな声で言えるものではない。
とりあえず、ヘソライト博士の今回の調査は⋯⋯そうしたウィキスタン共和国側の水面下でのバックアップ体制の下で行われる。
「じゃ、案内するから私に付いてきて」
「わかった的」
しかし、エルフの小娘の後を⋯⋯人間の成人男性が付いて行く様子は、傍目から変な誤解を招きそうな構図だった。実際、誘拐事件が多かった。
案の定、これを不審に思った兵士が声をかけて来た。
「あの~ちょっといいですか?海外から起こしの方ですか?パスポート見せてくれますか?こちらの子とどんなご関係ですか?」
これにキョどる博士⋯⋯しかし、キンカは自分は宿屋の迎えで博士は客だと兵士に食ってかかった。兵士もこれに納得してすぐに二人を解放した。
「あぶなかった的ぃ~」
「あんたも堂々としてなさいよ!!」
つづく