Young Heso Wright ~翻訳の迷宮~ 非公式面会

その後、車で空港からヤマダハルの中心街へ向かう⋯⋯
キンカと言う美少女エルフであるが、見た目は十代半ばくらいの小娘であるも、そうには思えないハンドルさばきを見せた。
ヘソライト博士とブリュリューズ伯爵の密会は、意外にもヤマダハルでのものとなった。
政府軍による警備が厳重であり、首都と郊外を行き来するのは容易でない。反政府軍の主要メンバーの中には、情報収集も兼ね、あえて首都に潜伏し、そこから全国の同志に指示を出したり、情報発信をしている者もいた。
ブリュリューズ伯爵もそのうちの一人のようだ。
後から聞いた話であるが⋯⋯キンカも表向き、政府機関で給仕として働き、スパイとしての役目も果たしていた。
現在も内戦が行われている正常不安定国とは言え、流石に首都の治安と警備は抜群で、人々は豊かで平穏な暮らしをしている様子に見えた。中心街は先進諸国の都市と何ら変わらず、煌びやかに発展していた。
「着いたわよ。伯爵はこの中にいるわ」
如何にも富裕層向けの豪華なカジノホテルの前に到着した。
二人は車から降りると黒服が近づいてきた。キンカは黒服に車のキーを預けると、自分の後に付いて来いとホテルの中へそそくさと入って行った。しかし、ヘソライト博士の服装はインディジョーンズのコスプレ姿だった。
ドレスコートが気になったが⋯⋯
他の黒服にとがめられることなく入場できた。従業員専用のエレベーターに乗り、伯爵のいる階へ向かう。
「伯爵はカジノホテルでも経営している的?」
静まり返るエレベーター内の気まずさを和らげるためか⋯⋯ヘソライト博士はそんな冗談を口にした。
「そうね。私たちの活動資金源よ」
しかし、キンカはそうあっさり答え、ヘソライト博士は妙な困惑を覚える。そして、目的の階に到着した。
扉が開くと⋯⋯
そこは特別ラウンジのような部屋が広がっていた。天井で輝くシャンデリアに目を奪われる。
すると、執務室のような小部屋から一人の男がラウンジに出てきた。
「あなたがヘソライト博士ですか。お初にお目にかかります。私がサンドストーム・ドゥ=ブリュリューズ伯爵・ユタカです」
「は、は、初めまして⋯⋯私がヘソライト的です」
キョどるヘソライト博士⋯⋯
「ウィキスタン側の意向は伺っております。できる範囲で今後の協力をしたいと思います」
つづく