Young Heso Wright ~翻訳の迷宮~ 地下墳墓

回廊の壁画に息を飲むヘソライト博士とイワナマヤの二人⋯⋯
しかし、いつまでもその場に留まっている訳にもいかなかった。目的はヘソス宮殿の地下深くに眠る封印された聖典の入手だ。
緩やかに下る⋯⋯坂のような長い、長い回廊の先を抜け出ると⋯⋯
左右の壁際に石棺がたくさん並べられた部屋へ抜け出た。
先程の「化身の間」よりも広い空間で、ざっと見た感じ石棺の数は100基以上は並んでいた。
「この部屋は⋯⋯一体、何的?」
「おそらく、ここは地下第三階層の入口⋯⋯怨念の間ね」
「怨念的な間?」
「魔法の生体実験や生贄として捧げられた人達の亡骸が眠る場所よ。主に奴隷やハラホロヒレ大王軍の捕虜たちらしいわ」
「⋯⋯」
古代科学の理不尽な一面に複雑な心境になるヘソライト博士⋯⋯悲しそうな目で石棺たちを見つめる。
考古学に造詣の深かったイワナマヤも石棺に魅了されていた。
ちょうど、ヘソライト博士が見つめていたものとは別の⋯⋯反対側の壁際に並べられていた石棺に歩み寄っていた。
次の瞬間である⋯⋯
パン☆
突然、乾いた音が鳴り響くと同時に、ヘソライト博士の後頭部強い衝撃が走る。まるでハリセンにでも叩かれたかのような感じだった。
「いきなり、何する的ぃ!?」
「えっ?えっ?えっ?あたし、何もしてないわよ!?」
「そ、そう的⋯⋯か。気のせい⋯⋯的か」
ヘソライト博士は釈然としなかったが⋯⋯再び、二人は石棺を間近で観察し始める。だが、しばらくすると⋯
パン☆
再び、乾いた音が鳴り響いた。
今度はヤマメマヤが後頭部を叩かれた。そして、二人で「やった」「やってない」と諍い始める。
しかし、気がつくと⋯⋯
それぞれの背後にハリセンを持ったミイラが立っており、二人は驚き互いに人差し指で差し合った。
直後、すべての石棺の蓋は開かれ、ミイラたちが次々と立ち上がる。
つづく