Young Heso Wright ~翻訳の迷宮~ 地下墳墓

投稿日 2025.10.28 更新日 2025.10.28

 回廊の壁画に息を飲むヘソライト博士とイワナマヤの二人⋯⋯

 しかし、いつまでもその場に留まっている訳にもいかなかった。目的はヘソス宮殿の地下深くに眠る封印された聖典の入手だ。

 緩やかに下る⋯⋯坂のような長い、長い回廊の先を抜け出ると⋯⋯

 左右の壁際に石棺がたくさん並べられた部屋へ抜け出た。

 先程の「化身の間」よりも広い空間で、ざっと見た感じ石棺の数は100基以上は並んでいた。

「この部屋は⋯⋯一体、何的?」

「おそらく、ここは地下第三階層の入口⋯⋯怨念の間ね」

「怨念的な間?」

「魔法の生体実験や生贄として捧げられた人達の亡骸が眠る場所よ。主に奴隷やハラホロヒレ大王軍の捕虜たちらしいわ」

「⋯⋯」

 古代科学の理不尽な一面に複雑な心境になるヘソライト博士⋯⋯悲しそうな目で石棺たちを見つめる。

 考古学に造詣の深かったイワナマヤも石棺に魅了されていた。

 ちょうど、ヘソライト博士が見つめていたものとは別の⋯⋯反対側の壁際に並べられていた石棺に歩み寄っていた。

 次の瞬間である⋯⋯

 パン☆

 突然、乾いた音が鳴り響くと同時に、ヘソライト博士の後頭部強い衝撃が走る。まるでハリセンにでも叩かれたかのような感じだった。

「いきなり、何する的ぃ!?」

「えっ?えっ?えっ?あたし、何もしてないわよ!?」

「そ、そう的⋯⋯か。気のせい⋯⋯的か」

 ヘソライト博士は釈然としなかったが⋯⋯再び、二人は石棺を間近で観察し始める。だが、しばらくすると⋯

 パン☆

 再び、乾いた音が鳴り響いた。

 今度はヤマメマヤが後頭部を叩かれた。そして、二人で「やった」「やってない」と諍い始める。

 しかし、気がつくと⋯⋯

 それぞれの背後にハリセンを持ったミイラが立っており、二人は驚き互いに人差し指で差し合った。

 直後、すべての石棺の蓋は開かれ、ミイラたちが次々と立ち上がる。

つづく