Young Heso Wright ~翻訳の迷宮~ もう一つのタルパ戦争

この物語は⋯⋯
タルパ界隈での遺恨を払拭し、タルパ戦争の決着をつけるため⋯⋯現実の未来世界からタイムリープダイブしてきた一人の陰陽師の戦いの物語となる。
陰陽師の名は浮島譲司⋯⋯
浮き草氏だ。
トトバース暦2010年7月、ウィキスタン共和国とヲティスタン共和国は、両国の国境線が未画定状態の北部山岳地帯で、存在しないはずの王国の王位継承権を巡る争いに介入していた。
この王位継承権を巡る争いとは⋯⋯
ハラホロヒレ大王の子孫と称し王位継承権を主張する一人の女と、サラーシッナァーン王の生まれ変わりと称する怪僧で、自らの宗教的思想の聖地と主張する一人の男との戦いになる。
これにもっともらしい理由を付け⋯⋯
ウィキスタン共和国は女側を支援し、ヲティスタン共和国は男側を支援することで⋯⋯両国の間で傀儡化による事実上の併合も裏で争われ、さながら代理戦争の様相を呈していた。
女は奇しくも浮き草氏の盟友ホロ女史と同じ名をしており、ハラホロヒレ大王の末裔で、古代タルパ戦争でタルパ王国内に生じた飛び地の独立王国の王位継承権を主張していた。
一方⋯⋯
男はサラプーチン(本名不明)と呼ばれ、多くの信徒や支持者により崇められ、上述の王国を発祥とする宗教の指導者であった。そうした歴史的な経緯から王国の支配権を主張していたのだ。
だがしかし⋯⋯
その王国は存在しない幻の王国だった。
古代タルパ神話で語られる伝説の桃源郷「サガミラス」をネタとする虚構に過ぎなかったのだ。
すべて、ホロ陣営側に付いた浮き草氏による謀略だった!?これにまんまと騙される形となったウィキスタンとヲティスタンの両政府⋯⋯
この争いは皮肉にも⋯⋯
タルパ戦争と呼ばれるようにもなっていた。
サラプーチンは「人は集団になるとカバになる」なる予言を残し行方をくらます。その後、サガミラスは本当にカバの楽園と化す。
この地に足を踏み入れた者は⋯⋯
問答無用でカバの獣人に化ける不可逆性の魔法にかかるようになる。魔法の天才、イワナマヤでも元に戻すことができなかった。
これを畏怖したウィキスタンとヲティスタンの両政府は停戦協定を結び、共同統治、隔離と言う形で話がまとまり戦いの幕が閉じられた。そして、浮き草氏とホロ王女は手を携え、二人はいずこか彼方へ消え去る。
つづく