Young Heso Wright ~翻訳の迷宮~ タロフルヤ

あ、そうそう。
タロフルヤ共和国とは⋯⋯
ウィキスタン共和国やヲティスタン共和国から⋯⋯
ちょうど、海峡を挟んだ対岸にある国だ。
アフリカ大陸のような広い国土を持ち、名古屋とエジプトを合体させたような雰囲気のする、砂漠とサバンナとジャングルの国である。
同国の最高峰であるウソマンジャロ山はとても美しい山である。
首都はホッカイロで古代タルパ時代に築かれたピラミッドが都市の景観で際立つ。質素倹約な国民性からケチな国とも揶揄されるが、民主共和制の平和で豊かな国である。主要産物は八丁味噌とタロイモ、キャッサバである。
小倉トーストが国民食となっており、喫茶店が街中はおろか、砂漠やサバンナのど真ん中、ジャングルの中までと至るところにあった。
遭難してもすぐに喫茶店が見つかるくらい、数の多さで圧巻していた。
人間以外にも鳥族の獣人も多く暮らしているため、くちばし治療にも対応できる歯科医が多い。
伝説の歯科医師、カカ・カポネの話はまた別の機会で語ろう。
話を元に戻す。
住むにはやや退屈な国であるため⋯⋯
若者の多くが国外へ夢を抱く。タルクスもそのうちの一人だと言えよう。
そして、あいつも⋯⋯
ジャック・ユノレソンはホッカイロの郊外にあるコミュニティカレッジで、国際政治経済学を学ぶ学生だった。
「俺、こんな国⋯⋯やだ。海外に行きたい⋯⋯」
キャンパス内にあった広場のベンチに座り、一人で頭を抱え込んでいた。
その時、風が突然吹き、一枚の新聞紙が彼の頭に覆い被さってきた。どこにぶつけていいのか⋯⋯よくわからない怒りに燃え滾る。
「なんだよ、この新聞紙!!」
しかし、手で剥いだその新聞紙の広告欄に、ユノレソンの興味をひくものが掲載されていた。ウィキスタン共和国の政府広報のようなもので⋯⋯外人部隊、傭兵募集のお知らせだったのだ。
「君も一緒に⋯⋯ヲティスタンで戦わないか⋯⋯」
邪見にしていた新聞紙を両手で広げ、この広告を食い入るように見つめるユノレソン。新聞紙の日付を確認したら本日のものだ。学内の誰かが朝買って、そこら辺に捨てたものだろう。
「コレだ!!俺が求めていたものはコレなんだ!!」
ユノレソンは新聞紙を握り締めると、勢いよくベンチから立ち上がった。
つづく