Young Heso Wright ~翻訳の迷宮~ 謎の覚醒

投稿日 2025.10.03 更新日 2025.10.04

 タロフルヤ共和国の首都ホッカイロの近郊にある大学で⋯⋯

 国際政治経済学を学ぶ勤労学生⋯⋯

 ジャック・ユノレソンは、ひとつだけ大きな問題を抱えていた。それは傭兵になる上での不安要素ともなる。

 時折、謎の発作を起こし、意味不明な話を始める点にあった。

 幸い、勤務先であるパンダチーズ工場の理解もあり、働きながら学び続けることはできていた。

「はぐっ☆」

「ジャック⋯⋯ジャック!!やだ!!まだ始まったわ!!」

「あ⋯⋯あい⋯⋯あいつがやって来る⋯⋯」

 同じ大学に通う同級生が、そこで店員のアルバイトをしており、ユノレソンの特殊な体質を知っていた。

 同級生は急いでコップに水を汲んで来てユノレソンに飲ませる⋯⋯

「ほら、これ飲んで落ち着いて!!」

「ふーう、はぁ、はぁ、はぁ⋯⋯(ゴク)(ゴク)(ゴク)⋯⋯ふーう、ありがとう。助かったよ。どうやら元の状態に戻ったようだ」

「また、例の人がやって来たの?」

「そ、そうなんだ⋯⋯また、イマジナリーフレンドっぽいヤツが俺の頭の中に入り込んで来て、そのまま居座ろうとしたんだ。すごい汗臭そうなデブで⋯⋯なんで美少女じゃないんだろう。可愛い女の子なら問題ないのに⋯⋯」

「⋯⋯」

 トレーを両手で抱え、困った笑みを浮かべる同級生⋯⋯

 まぁ、毎度のことである。

 また、水を飲ませたり背中を摩るなどすれば、すぐに落ち着きを取り戻し回復する、比較的、程度の軽いものだった。

 しかし、こうして時折であるが⋯⋯

 発作と同時に⋯⋯

 別世界にいる自分と何か関係のありそうな人物が、自分の脳内に居座ろうとするので、これを必死で追い払おうとするのだ。

「俺は⋯⋯俺はタロフルヤを出るんだ!!大学を卒業したら海外へ行くんだ。パンダチーズ工場で一生を終えたくない」

「今度、専門の医者に診てもらった方がいいかも⋯⋯」

 ユノレソンは同級生のこの言葉に対して、悲しい目つきになる⋯⋯同級生を一瞬だけひるませる。

「やっぱり⋯⋯俺はおかしいんだろうか?自分でも自分のことがワケワケメになる時がある。病院に行った方がいいのかな?」

つづく