Young Heso Wright ~翻訳の迷宮~ 謎の覚醒

タロフルヤ共和国の首都ホッカイロの近郊にある大学で⋯⋯
国際政治経済学を学ぶ勤労学生⋯⋯
ジャック・ユノレソンは、ひとつだけ大きな問題を抱えていた。それは傭兵になる上での不安要素ともなる。
時折、謎の発作を起こし、意味不明な話を始める点にあった。
幸い、勤務先であるパンダチーズ工場の理解もあり、働きながら学び続けることはできていた。
「はぐっ☆」
「ジャック⋯⋯ジャック!!やだ!!まだ始まったわ!!」
「あ⋯⋯あい⋯⋯あいつがやって来る⋯⋯」
同じ大学に通う同級生が、そこで店員のアルバイトをしており、ユノレソンの特殊な体質を知っていた。
同級生は急いでコップに水を汲んで来てユノレソンに飲ませる⋯⋯
「ほら、これ飲んで落ち着いて!!」
「ふーう、はぁ、はぁ、はぁ⋯⋯(ゴク)(ゴク)(ゴク)⋯⋯ふーう、ありがとう。助かったよ。どうやら元の状態に戻ったようだ」
「また、例の人がやって来たの?」
「そ、そうなんだ⋯⋯また、イマジナリーフレンドっぽいヤツが俺の頭の中に入り込んで来て、そのまま居座ろうとしたんだ。すごい汗臭そうなデブで⋯⋯なんで美少女じゃないんだろう。可愛い女の子なら問題ないのに⋯⋯」
「⋯⋯」
トレーを両手で抱え、困った笑みを浮かべる同級生⋯⋯
まぁ、毎度のことである。
また、水を飲ませたり背中を摩るなどすれば、すぐに落ち着きを取り戻し回復する、比較的、程度の軽いものだった。
しかし、こうして時折であるが⋯⋯
発作と同時に⋯⋯
別世界にいる自分と何か関係のありそうな人物が、自分の脳内に居座ろうとするので、これを必死で追い払おうとするのだ。
「俺は⋯⋯俺はタロフルヤを出るんだ!!大学を卒業したら海外へ行くんだ。パンダチーズ工場で一生を終えたくない」
「今度、専門の医者に診てもらった方がいいかも⋯⋯」
ユノレソンは同級生のこの言葉に対して、悲しい目つきになる⋯⋯同級生を一瞬だけひるませる。
「やっぱり⋯⋯俺はおかしいんだろうか?自分でも自分のことがワケワケメになる時がある。病院に行った方がいいのかな?」
つづく