狐の嫁入り

投稿日 2025.03.29 更新日 2025.03.29

 浮島は無視をし続けていたが⋯⋯

「ぶちゅ~~~」

 直後、唇に強い違和感を覚え、驚いて目を勢いよく開ける。

 見知らぬ少女の顔面ドアップが迫っていた。どうやら、浮島はこの少女とキスをしていたようだった。

 こんな事は今までになかった。

 突然の思わぬ出来事に頭が混乱して言葉を失う。

 少女も浮島の反応に驚き、身構えるような姿勢となり、畏まった表情を見せつける。少女をよく見てみると⋯⋯

 狐耳をしたケモ娘だった。どうやら、狐の精霊らしい⋯⋯

 意味不明な時間が数秒間続いた後、浮島が恐る恐る少女へ問いかける。

「君は⋯⋯一体、何?」

 すると、狐耳をした少女は正座の姿勢になり、両手を前に付いて浮島に深々と頭を下げて来た。

「不束者でございますが、よろしくお願いします」

「⋯⋯⋯⋯」

 頭の中が真っ白になる浮島⋯⋯

 少女は頭を起こすと、ニンマリとした笑顔を見せつけてきた。

「わっちの名は柚子。たった今からそなたの嫁じゃ」

「いや、ちょっと待って。僕は君のことをぜんぜん知らない」

「わっちは以前から知っておったぞ。そなたが子供の頃からずっと近くにいた」

「⋯⋯」

 これには、なんとなく思い当たる節があった⋯⋯

 それは浮島が小学生の時である。

 自宅近くの路上で、倒れて身動きが取れなくなっていたキツネを見つけ、保護したことがあったのだ。

 どうやら、車にはねられたらしい。

 施しようのない致命傷を負っていたらしく、獣医からも治療を断られ、翌朝まで虹を渡ってしまった。

「君はまさか⋯⋯あの時の」

 少女はニコニコ顔でうなずいた。

 しかし、浮島は困惑するばかりだ。突然、嫁だと言われても⋯⋯

 次の瞬間、少女は浮島に馬乗りになり、浮島の両肩を押さえつけて来た。

つづく