精霊の出産

2026.07.26

この世での最終目的地⋯

例のビルの屋上にあった貯水タンクの傍に辿り着くと⋯

「えっ!?何⋯コレ⋯」

気づいたら⋯卵をすでに妊娠していた。お腹を大きく孕ませていたのだ。あまりの自分の体の急変に驚く。

とりあえず⋯

あとは狐の精霊がやって来るのを待つだけだ。

卵の妊娠を確認したら⋯再び、ダイブ界からこの場所に現れて来る手筈になっていた。ただ、狐の精霊を疑う訳ではないが若干の不安を覚えていた。

「狐のお姉さん⋯本当にやって来るかなぁ」

彼女をそうつぶやきながら膨らんだお腹を摩る。すると⋯直後、腹部から激しい痛みが走り始めた。

陣痛だ⋯

どうやら、産卵もすぐに済まさねばならないらしい。

まぁ、すぐに終わって楽になれるだろう。それまでの我慢と自分に言い聞かせた。にしても痛い。凄まじく痛い。

しかし、どうにも我慢できない痛みに襲われ続ける。彼女の貯水タンクの中で悶え苦しみ続ける。

そう言えば、卵の産み方なんて知らない。

これこそ⋯あの変態占い師に確認まで聞いておけば良かったと後悔した。とりあえず、本能の赴くまま⋯股間に力を入れて卵の排出を試みる。

「い、痛いぃ」

すると⋯

「遅くなってごめんなさい!!」

狐の精霊が約束通り現れた。

狐の精霊はすぐに彼女の背後に回り込み強く抱きしめ、耳元で呼吸の整え方を説明する。彼女はそれに従って再び産卵を試み直す。

「うぅ⋯ううう⋯」

「あともう少し!!がんばって!!」

純白の卵がにゅるっと排出された。

痛みはウソのようになくなり、達成感による至福に包まれた。卵を抱きしめ頬ずりした。あとは⋯自分がこの世から消えるだけだ。

「卵はここに置いて行くわよ。さぁ、私が新しい世界に連れてってあげる」

狐の精霊は手をひっぱるように彼女を起こし上げた。

つづく