セックスを初めて知った夜

ただ、不安があった⋯
交尾(セックス)の具体的なやり方がわからなった。
イメージとして思い描くこともできなかった。もちろん、その時になれば⋯おそらく、本能に従うままできるだろう。
まるで⋯
コンピューターに組み込まれたプログラム、命令処理のように⋯
機械的に交尾(セックス)して妊娠、卵をいずこか安全な場所へ産み落とし⋯そして、この世界から消えてしまう。
気づいたら⋯
卵のような⋯蛹のようなものの中から生まれ出て⋯今、ここにいる。それがなんだか⋯無性に悲しくて悔しいものにも思えた。
こうして感情もある。神様も本当に酷なことをしてくれたもんだと⋯彼女は天に向かって恨み言のようなものを呟く。
その日も⋯都内であるにも関わらず、美しい星空を仰ぐことができた。
気がつくと⋯
ビルの水道タンクの上でオナニーをしていた。
これが性欲かと涙をこぼす。
たぶん、今、自分が愛撫しているところに、男性タルパーの何かがくっ付くのだろう。交尾(セックス)の基本を自慰行為で直感的に学んだ。
火照りが収まらず、しばらくオナニーを続けた。
ターゲットとなる男性タルパーは⋯
この近くのワンルーム・マンションで一人暮らしをしている童貞だった。今まで探し回った中で、一番イケメンに思う童貞だった。もう、何回も下見をしているので、心の準備は万全だ。
基本、夜行性なので⋯
夜明けから日没までの間は、直射日光のあたらない場所で静かに息をひそめ、夜を待つ。とりま、明日の夜と決めた。
それまではこの水道タンクの中で潜むことにする。
その時である⋯
自分が今いるビルの一室から女性の喘ぎ声のようなものが聞こえてきた。好奇心にそそられ、声のする部屋の窓際まで降りてみた。
すると⋯
「こ、これが交尾(セックス)なのね!!」
どうせ、普通の人間に自分の姿は見えない。部屋の中へ入り込む。その日の夜は、間近で人間のセックスを観察し続けた。
つづく